ある雨の日のことだった。
俺は相も変わらず境内で花枝を待っていた。
この日はやけに人が出入りしていて、恐らく法事が行われていたんだと思う。
人がまばらに行き交う中、一人の小さな少女が俺に駆け寄ってきた。
黒いワンピースを着ており、その法事の参列者だとすぐにわかった。
「おじちゃん、傘は?」
俺のことが見えるのか。
霊になって以来、話しかけられたのはこれが初めてだった。
それにしても、おじちゃんとは失敬な。
俺はまだ20歳だ。
「俺は傘がなくても平気だよ」
にっこり笑ってやると、少女は逆に表情を歪ませた。
「濡れちゃうよ。風邪ひいちゃうよ」
そう言って思いっきり背伸びをして、俺を傘に入れようとした。
しゃがんで傘に入ってやると、彼女は
「濡れてない?」
と言って俺の肩を撫でた。



