浮気女の嫁入り大作戦


 その後二人は昨日着ていたスーツに身を包み、精算をしてホテルの部屋を出る。

 エレベーターに乗り込むと、沢田は決まって奈緒にキスをする。

 ズンと重力がかかり、1階に到着するのがわかるまでずっとキスをしている。

 奈緒も黙ってそれを受け入れる。

 そして扉が開く瞬間、二人でふふっと笑い、気だるい土曜の朝日を浴びるのだ。

「じゃ、また月曜ね」

「おう。気を付けて帰れよ」

「うん。あ、原稿の修正期日、火曜だからね。忘れないでよー」

「はいはい。ちゃんとやってますよ。じゃーな」

 駅で別れた二人はそれぞれの列車へ。

 奈緒は大あくびをしながら座席に腰かけた。

「ハンバーグ……よりはステーキが好きそう。でもそれじゃ焼いただけだし……」

 何やら考えている。

 ああ、手料理で樹に良妻アピール作戦か。