沢田はゆっくりとドアを閉め、奈緒の部屋を出ていった。

 第一幕、終了。

 大事なのはここからだ。

 沢田がいたことに対する弁解をしなければならない。

「奈緒……。どうして男を部屋に入れたりしたの?」

 穏やかな樹にしては珍しく険しい顔をしている。

 ピリッと空気が張り詰めたのは、奈緒の緊張とインド人の威圧のせいだ。

「ごめんなさい、あたし酔っぱらっちゃって、沢田くんにここまで連れてきてもらったの」

 奈緒はそう言って樹の体に巻き付いた。

「だからって、部屋に入れることないだろ」

「心配かけてごめんなさい。本当に酔っぱらってて……電話でも変なこと言ってたでしょ。気にしないでね」

 さりげなく電話の失態も弁解する。

「それはいいけど、あいつに何もされてない?」

「まさか。あたし、トイレで吐いて、着替えて、落ち着いたからちょっと仕事の話しただけだもん」