浮気女の嫁入り大作戦


 そう。

 これからホテルを出て自宅へ戻った後、すぐに樹が車で奈緒を迎えに来る予定だ。

「喜んでくれるでしょ。そしたら毎熊さんと結婚したいって思うかもよ」

「そっか……」

 コーヒーをすすりながら思考を凝らす。

 樹は食に関してやや高級思考だ。

 一緒に食事をするときはオシャレなダイニングバーやイタリアンレストラン、当然寿司は回らない。

 そんな彼に、何を作れというのか。

 奈緒が作れるのはせいぜい家庭料理だ。

「そんなに考えなくても、ハンバーグでいいじゃん。男はみんな好きだよ」

「簡単に言わないで。沢田くんとは食べてるものが違うのよ」

 何とも失礼な言葉だが、あながち間違いではない。

 沢田と奈緒が食事をする時は大体安い居酒屋かファミレスだ。

 昼ならファストフードということもある。

 沢田は肩を竦めて首元のネックレスのモチーフをカチリと鳴らした。