浮気女の嫁入り大作戦


 翌朝、土曜日。

 着替えてコーヒーを飲んでいた奈緒は昨日の話を持ち出す。

「ねぇ、どうすれば結婚したくなるかなぁ」

 沢田にしてみれば「知るか」という話だが、人の良い彼は親身に相談に乗ってしまう。

「やっぱあれじゃない? 俺が守ってやらないとダメだ、とか思った時じゃない?」

 沢田は自信なさげにそう答え、胸にかけたネックレスのモチーフをいじった。

 お前がそんなだから奈緒が調子に乗るんだ。

「他には?」

「うーん。美味い手料理作ってもらったりとか」

「料理か……」

「できるの? 料理」

「できるよ」

「意外」

「それどういう意味?」

 頬を摘ままれた沢田に同情する。

 しかし仕事以外はガサツな奈緒でも、「意外」に料理はできるのだ。

「だったら今日にでも作ってあげればいいじゃん」

「今日?」

「これから彼氏と会うんでしょ?」