「結婚って、どうしたの、急に」
酔っ払っているだけだ。
「もぉ、バカ! 樹のバカ……」
ダメだ。
涙目になっている。
ヤケになって沢田のことなど口にしなければよいのだが。
沢田は奈緒の横に座り直し、突っ伏した体を起こしてやった。
電話からは樹の情けない声が漏れる。
「参ったな……」
そりゃそうだろう。
電話の向こうでインド人が怒っているのは容易に想像できる。
沢田は何を思ったのか、奈緒の手からスッと携帯を抜き取った。
「ちょっと!」
奈緒は取り替えそうと手を伸ばしたが、キュッと彼に押さえられる。
そして沢田は右腕に奈緒を抱いたまま、電話を自分の耳に当てた。
おいおい、どういうつもりだ。
樹と何を話そうというのか。
「お電話代わりました」
急な展開に、奈緒も言葉を失ったようだ。



