インド人は大して二人を邪魔するでもなく、ただ奈緒に怒りを露にするだけだった。
俺の存在なんてほとんど無視だ。
話しかけられたところで俺は彼の言葉を話せるわけでもないし、会話にもならないわけだけれど。
霊同士、近くにいれば気持ちのようなものはバシバシ伝わってくる。
「女のくせに」
彼の怒りの中にはそのような意味が込められている。
男尊女卑の思想は、今の日本では古く、通用しない。
大正末期生まれの俺だって、長い霊生活の中で時代と共に学んできた。
名残は多く残っているようだが、女がますます強くなる昨今は男が威張りづらい世の中なのだ。
奈緒が樹を思う気持ちはインド人に伝わっているはずだ。
浮気を擁護する気はないが、奈緒の不満もわかってやってほしい。
そして俺がそのように思っていることも、理解してほしい。
何せ樹に憑いている霊だ。
他の気持ちが汲めるような性格でないことは、想像がついているが。



