「ねえ樹。あたしがどこにも行かないように、ちゃんと捕まえててね」
「もちろん」
「――――!」
最後のインド人の言葉は二人に聞こえていない。
意味はわからないが、
「そんな女とはさっさと別れてしまえ!」
くらいのことを言っているのだろう。
彼から伝わってくるのは怒りや憎しみばかりだ。
なんとも居心地が悪い。
「大好きだよ、樹」
「俺も」
「――――!」
ああ、こんなことなら見えないままのほうが良かった。
俺は一人黙って外を眺めることに専念した。
これから奈緒はどうなるのだろうか。
壁にぶち当たることは、確実だ。
嫌な予感がするし、正直怖い。
それにしても、樹、厄介な霊を憑けたものだ。



