浮気女の嫁入り大作戦


 鼻で笑うと、右隣からゾワゾワとオーラを感じた。

 樹に憑いている霊だろう。

 相変わらず見ることはできないが、この時一瞬、ほんの微かにだが、何かが触れたような気がした。

 二人が付き合ってきた二年もの間、ずっと空間を共にしているのだ。

 合わなかった波長も、だんだん合うようになってきたのかもしれない。

「奈緒。何があったのか話してみてよ」

 奈緒の演技にかかったままの樹は、奈緒の思うがままに悩みを引き出そうと頑張っている。

 気付けば運転中なのに手までしっかり握り、心底心配している様子だ。

「実は……ね。あ、でも言わない。言えないよ」

 じらす作戦か。

「気になって眠れなくなる。話して」

「だって、樹に話すことじゃないもん」

「会社のこと?」

「……違うけど」