「うー! あたしだって結婚するもーん!」
などとまだ不満を垂れている奈緒の横へ、タバコを吸い終わった沢田がダイブした。
ボヨンとベッドが弾み、奈緒の体も跳ねる。
「慌てることないだろ。相手もいるんだし」
「そうだけどー」
「焦ってんの? だせーな」
「焦ってるわけじゃないもん」
……焦ってるくせに。
結婚願望がエベレスト並みに高くなったのは、大学からの友人の結婚が決まったからだ。
しかも相手はベンチャー企業の社長さん。
更に都内の高級マンションに住んでいる。
その友人も奈緒に負けないくらい美人で、密かにライバル視している。
見栄っ張りで負けず嫌いの奈緒は、先に幸せを掴まれたことに大きな敗北感を覚えているのだ。
就職が決まった時期も、付き合ってきた男の数も、持っているブランド品の数だってあたしの方が勝っているのに。
……と。
俺に言わせてみりゃ、下らない。



