結婚式というキーワードを出した奈緒は、樹の出方を慎重にうかがっている。

 視線は俺……じゃなくてテレビに向いているが、意識は彼の反応だけに集中しているようだ。

「うん、キレイな教会だし、いいと思うよ」

 前向きな言葉に奈緒の心が弾んだのが伝わってきた。

「奈緒はキレイだし、ウェディングドレス似合うだろうな」

 後ろから抱きしめた状態でそう囁いた樹。

 奈緒の心は更に弾む。

「あたし、ご飯作るね」

 奈緒は追い討ちをかけるように良妻アピール作戦を追行しようとする。

 奈緒と過ごしてきた二年間、結婚のけの字も見せてこなかったこの男。

 意外に洗脳されやすいタイプなのかもしれない。

 もしかしたら奈緒の嫁入り作戦は、あっさりと片が付いちゃったりして。

 奈緒が米をとぎ始めると、樹はリモコンでチャンネルを変えた。

 教会が紹介されていた番組はまだ続いていたが、あまり興味はなさそうだった。