奈緒はお疲れ様とかいつもの簡単な話をして、1分少々で電話を切った。
その間に奈緒の分までドリンクを準備した沢田が苦笑いを浮かべる。
「ずっと思ってたんだけどさ、毎熊さん、彼氏のことホントに好きなの?」
「大好きだけど。どういう意味?」
「だってさ、俺、文句ばっか聞いてるし」
奈緒は沢田に樹の愚痴を言ったり不満の捌け口にしたりしている。
そう思うのも無理はない。
「何言ってんのよ。樹はカッコイイし、エリートだし、優しいし、気前も良いし、すっごくいい彼氏だよ。でも完璧な人間なんていないんだから、不満もあって当然でしょ?」
「そうだけど」
「ホントに好きだから結婚したいの。で、何か作戦思いついた?」
沢田は再び苦笑いをして首を横に振った。
その時軽くため息をついたことに、奈緒は気付いていない。
「うーん、結婚情報誌とか見せてみるかな。いや、それはやりすぎかな?」
無神経に思考を凝らす奈緒を見ながら、沢田は少しネクタイを緩めた。



