奈緒の質問に、佐和子はサラダを飲み込んでから一言。
「その前に、そんな彼でいいの?」
目からウロコの質問返し。
「はい。彼がいいんです」
佐和子は迷いのない奈緒に感心したように微笑んだ。
「奈緒ちゃん、ほんとに好きなのね。彼のこと」
「はい」
……浮気をしていることをチクってやりたい。
残念ながら俺の声は届かないけれど。
せめて憑いている霊にでも、と思ったが、佐和子に憑いているのは、どうやら赤ん坊の霊のようだ。
「時間はかかるかもしれないけど、ゆっくり洗脳していくしかないんじゃないかな」
「洗脳かあ」
「自分のいいように教育しちゃうのが手っ取り早いもの」
男前な佐和子らしい回答に、奈緒は何度も頷いていた。
樹を洗脳し教育しようというのか。
口説き落としたときのように。



