疑問は

「え? えぇっ?」

 という声になって漏れだし、その声で隣の沢田も目を覚ましたらしい。

 もそもそ動き、寝ぼけた顔を奈緒に向ける。

 カチッとネックレスの音がした。

「あ……起きた?」

 沢田はローブを身に纏っている。

 奈緒は昨日の格好のままだ。

「え? え?」

 未だにパニックから抜け出せない奈緒。

 もしかしたら全て夢だったのではないか。

 樹がインドに行くことも、別れてしまったことも、沢田に文句を言われたことも、会社を辞めたことも。

 しかし、テーブルに置かれた花束が、それらが夢ではないことを物語っている。

「もしかして、覚えてないの?」

 沢田の苦笑いに、奈緒も苦笑いで返す。

 自分は送別会が終わった後、移動して一人で飲んでいたはずなのに。

 沢田と合流した記憶も、ホテルに入った記憶もない。