しかしその箱は、厚みのあるベルベットの箱ではなかった。
奈緒の期待がわずかに萎む。
だけど笑顔を崩すわけにはいかない。
「この間、仕事で店舗を回ってたときに見つけたんだけどさ」
ご丁寧にリボンの巻かれた箱。
中身はネックレスだった。
キラリと光る石付きだ。
同時に奈緒の目も輝く。
「誕生日でも何でもないのに……」
「いいんだよ。俺が買いたくて買ったんだから」
「ありがとう。超大事にする」
樹の手によって彩られた奈緒のデコルテ。
彼は満足そうに微笑んだ。
イケメン、エリート、プレゼント。
連れていて誇れるルックス。
自慢できる地位。
高価な貢物。
奈緒はより一層結婚願望が高まった。



