メイク直しを終えた奈緒は、ポーチをバッグにしまいながらぽつりと言った。
「正直、今ほっとしてるの」
「え?」
「冷静に考えて、インドで暮らすなんてハードよね」
「そうだね」
「樹と結婚したくて、勢いでインドに行くって決めたけど……。実際そうなったらきっとテンパってたと思うから」
立ち上がった奈緒は清々しく、早くも吹っ切れたように見える。
うじうじめそめそすると思っていたが、想像よりタフだ。
「俺だって多少はテンパってるさ」
フッと笑う樹に笑顔を返し、奈緒は玄関へ歩き出す。
「送ろうか?」
「いい。こんな時間だし」
「そうか」
奈緒は笑顔のまま靴を履き、最後の言葉を述べた。
「今までありがとう。大好きだった」
「俺も。大好きだった」
「インドに行っても、イイ男でいてね」



