早口で言い合う二人。
互いに失望してしまった彼らの関係修復は、恐らく困難だ。
「やめよう。価値観をこれ以上ぶつけ合っても、きっと無意味だよ」
「……そうね」
まだ言い足りない奈緒は、奥歯をグッと噛み締めて感情を押さえ込んだ。
部屋が静かになり、雨音がサラサラ響く。
奈緒はいたたまれなくなって、バッグから化粧ポーチを取り出し、涙で崩れたメイクを直し始めた。
「別れるんだね、あたしたち」
「そうだね」
「なんか、これで良かったみたい」
「俺もそう思うよ」
すっかり樹への愛が冷めてしまった奈緒。
虚しさオーラが部屋いっぱいに広がっている。
インド人は俺を見て、満足そうに笑っていた。
すべて彼の都合の良いように流れている気がする。
それほど彼の力が強かったのだろう。
俺が花枝を思う気持ちより強かったのだと思うと、悔しい。



