「なによ、それ。そんなの結婚する意味あるの?」
奈緒の涙は大分乾いてきていた。
感情は悲哀から失望へと変わりつつある。
「微妙だね。だから、俺には結婚願望がほとんどないんだと思うよ」
失望が膨れ上がると、怒りが芽生えてきたらしい。
奈緒はとうとう樹に本性を見せ始めた。
「なんか樹、ヘタレみたい」
「そうかな? 俺はずっと高い水準で生活していたいだけだよ」
「典型的独身貴族ね。高い水準っていうより、自分が稼いだお金を他の誰かのために使うのが嫌って言ってるみたいに聞こえる」
「奈緒のために使ってたじゃないか」
「本当にそうならあたしと結婚できるじゃない」
「それとこれとは全く別問題だろう? 奈緒はもっと理解がある人だと思ってたよ」
「あたしだって、樹はもっと男気がある人だと思ってた」



