樹はそんな奈緒を慰めてやることもできず、困った顔をする。
そしてボックスティッシュをそっと奈緒の膝元に置いた。
「少し前から奈緒が結婚したがっていたのには気付いてたよ」
樹の言葉を、奈緒はティッシュで目を押さえながら聞く。
ぐすっとすすりあげると、その音の方が樹の声よりも大きい。
「でも、俺には結婚はまだ早いというか……願望がないっていうか。正直言って、家族とかそういうの、重いんだよね」
「……重い?」
「うん。一生俺が面倒見なきゃいけないってことでしょ? なんかそういうの、億劫っていうか……。奥さんも一生働くっていうならいいけど、奈緒はそんな感じじゃなかったし」
なんだよ、こいつ。
男のくせにずいぶん情けないことを言う。
昭和の時代だったら、そんな男に結婚する資格はなかったぞ。
これは女が強くなった時代の産物か。



