「あのね、樹」
気持ちだけで勢いをつけたまま発した言葉は、やや大きく早口だ。
奈緒の両手はキュッとかたく握られている。
一方で隣に座る樹は背もたれに肘を載せて、ポーズだけはリラックスしているように見えた。
「インド行きのことなんだけど、ね」
「うん」
奈緒の言葉には勢いがなくなっていく。
「あたしも、一緒に……連れていってほしいの」
肝心な言葉は弱々しく、まるでポタポタと水をこぼすようだった。
「え?」
「だから、あたしも樹と一緒にインドに……」
「ちょっと待って。そんなことできないよ。奈緒は日本で仕事だってあるし、あっちで仕事を探すにもインドの言葉なんて話せないだろ?」
ああ、やはり樹は気持ちの汲めないやつだ。
そんな樹に、奈緒はとうとう大きな声で言った。



