しばらくして沢田が離れると、奈緒はぽつりとその場に立ち尽くす。
「じゃあね」
立ち去ろうとする沢田を、奈緒はそれ以上追わない。
俺は沢田についていく花枝に手を伸ばしたが、虚しくも空を切るだけだった。
振り向きもしない。
奈緒と沢田の関係は終わってしまった。
やっと花枝が俺に気付いたというのに。
神はつくづく俺を見捨てているらしい。
いや、今を生きる奈緒が一歩を踏み出すためだと捉えるべきだろうか。
部屋の空気がドアの閉まる音で物悲しく震える。
奈緒は何事もなかったように鍵を閉めにドアへ向かった。
思い立った奈緒は、施錠を済ませるなり髪を乾かし、身支度を整える。
7月まで悠長にしている時間はない。
善は急げだ。
腹をくくった奈緒の、最終作戦が始まった。



