奈緒も見送ろうと立ち上がると、それを見計らったようにガツッと沢田の腕が巻き付く。
慣れたように奈緒も腕を背に回すと、沢田越しに花枝と目が合った。
待ち焦がれた瞬間に、霊体ながら身震いするほどの緊張が走る。
時が止まったような感覚さえした。
「花ちゃん」
聞こえているのかいないのか、返事はない。
ただし目は合ったまま。
俺のことを覚えていないのだろうか。
いや、そんなはずはない。
花枝は俺に微笑みかけ、いつも寺でしたように手を振った。
「これで、最後ね」
沢田の声が低く部屋に響く。
奈緒が何かを言うより早く、沢田が奈緒の唇に噛み付いた。
二人はいつもエレベーターでしたように長いキスをしている。
花枝は手を振り、沢田はキスをする。
ああ、なるほど。
これは別れの儀式なのだ。



