生ぬるくて甘ったるい車内の雰囲気がつまらなくて窓に目をやると、混んでいる道路の風景もまたつまらない。
二人の土曜はいつも、都心に住む樹が郊外に住む奈緒を迎えに来て、都内や横浜へ出向き飯を食うついでに少しぶらついて、樹の部屋で一泊。
日曜は夕方ごろまでまったりして夕食後に樹が奈緒を送り届ける、というサイクル。
毎週同じようなデートをして楽しいのだろうか。
たまには空気のきれいな田舎の観光地にでも連れていって欲しいものだ。
コインパーキングに車を預けた二人は、三軒茶屋の街を散策し始めた。
樹の腕に自らの腕を絡めた奈緒は、笑顔が少し固くなっている様子。
上品っぽく作った笑顔をずっと続けていたのだ。
無理もない。
表情に小細工をせずとも顔はそこそこ出来上がっているというのに。



