店の良さをアピールする樹に、奈緒はひたすら頷き同調している。
奈緒からストレスは感じられない。
こうなることはどうやら想定内だったようだ。
俺は後部座席で二人のやり取りを聞きながら、ふと隣に違和感を感じた。
まただ……。
実はこの樹にも憑いている霊がいるらしいのだが、俺とは波長が合わないのか見ることができない。
どんな霊なのかお目にかかりたいものだが、存在を感じるだけ。
悪い霊なら守護霊らしく奈緒を守ってやることもできるのだが、今のところ害はないし、俺が働く必要はないと判断している。
気付けば二人は席の間で指を絡めており、奈緒はにっこり笑顔で樹の話に頷いていた。
「そうなんだー」
ブリッコめ。
樹も樹だ。
エリートのくせに奈緒の浮気に全く気が付かないなんて。
いや、二人が出会ったときから沢田とはそういう関係だったから、奈緒に異変がない分気付きにくいのかもしれない。



