「成田は遠いよ」
「知ってるもん。でも、行きたいの」
「そう? じゃあ、予定は今度メール入れとくから」
「うん」
雲行きはみるみる悪くなっていき、夜を待たずして雨が降り始めた。
まだ昼下がりだというのに薄暗く、俺の不安を助長する。
不安を感じているのは俺だけではないらしい。
樹からもじわりと不安のようなものが伝わってくる。
土産を期待する奈緒と、隣のインド人はご機嫌だ。
対角線上に張り巡る不安と期待。
車内は異常にオーラが循環している。
渦巻いてどうも気持ちが悪い。
そんなものを微塵も感じない生きた人間の二人は、いつものように外で飯を食い、帰宅し、風呂に入り、淡白なエクササイズをしてから眠りについた。
樹の部屋には、大き目のトランクが準備されていた。



