「オイル交換でお待ちの松本様、お待たせいたしました」
派手な色のツナギを着た従業員が樹を呼びに来た。
樹の話はまだ終わっていないようだったが、二人は話を切り上げ、車へと向かう。
ピットには見慣れた樹の車が前向きに駐車されていたが、俺はなぜか哀愁を感じた。
「エンジンオイルの交換、完了しました。ウォッシャー液が大分減っているようですが、足しておきますか?」
「ああ、お願いします」
「それと、もうすぐ車検ですので、一応これ、チラシです」
「どうも」
樹はチラシを受け取り、ウォッシャー液の注ぎ足しを完了してから車に乗り込んだ。
奈緒も助手席へ、俺とインド人は後部座席へ。
樹は店員から受け取ったチラシを、乱雑に俺の方に放った。
チラシは俺の太股の下にパサッと音を立てて落ちた。
あまり興味はないようだ。



