樹は少し困った顔をして奈緒の頭を撫でた。
「辺鄙じゃないさ。インドは今じゃ世界2位の成長率を誇ってるし、それなりの技術も持ってるんだ」
「それは知ってるけど、なんだか治安とか悪そうだし」
眉間にしわを寄せた奈緒。
この間インドの事件がニュースになっていたのを思い出したようだ。
「大丈夫。不用意に街に出たりはしないから」
「うん、気を付けてね」
インド人はきっと、インドに帰りたかったのだろう。
それがこの出張を呼び寄せた。
彼がどのような理由で樹に憑いたのかは謎であるが、希望が叶い満足そうなその表情を見ていると、霊仲間としては羨ましくもある。
俺はいつ、花枝に気付いてもらえるだろうか。
再会してから3年も経っているというのに。
花枝が俺に気付いてくれるなら、俺はこのインド人なんて見えるようにならなくて良かったのに。



