樹は近くのカー用品店で時間を潰しており、ついでにオイル交換をするとかで奈緒がその店へと出向く形で待ち合わせ。
暑く湿気の多い6月は、少し早歩きしただけでも汗が滲む。
更には朝の行為による疲れは足にもきているようで、ヒールのパンプスにストレスを感じているようだ。
奈緒が店に到着した頃、樹は待合室のソファーでマンガを読んでいた。
「ああ、奈緒。おそよう」
穏やかな笑顔を見るなり、奈緒の目にはじわりと涙が滲んだ。
零すことも悟られることもなかったが、奈緒はこの時初めて樹に罪悪感を感じたのだ。
「疲れた顔してるね。決算の月だし、仕事がハードなのかな?」
「そうなのかも。目覚ましにも気付かないくらいぐっすり眠っちゃってたし」
無理するなよ、と頭を撫でる樹の後ろには、今日もインド人がニヤニヤと笑っている。
やはり嫌な予感がする。
樹と奈緒の間に、きっと何かが起こるのだ。
インド人は一体何をしようとしているのだろう。



