浮気女の嫁入り大作戦


 二人がホテルを出たのは、結局チェックアウトの時間ギリギリだった。

 エレベーターでのキスがないのは、今回が初めてかもしれない。

 奈緒は沢田に愛されふわふわとした体を持て余し、沢田は罪悪感に苛まれて、気まずい空気が漂っている。

「じゃ、また月曜ね」

「ああ、うん」

 二人は駅でそっけなく別れた。

 沢田は自分の行動を決して謝らなかったし、奈緒もそれを責めることはしなかった。

 ふらふらと列車に乗った奈緒は、ため息をつきぼーっと視線を宙に漂わせる。

 あと一時間弱で樹が迎えにくる。

 その間に帰宅し、シャワーを浴びて、身支度を……もちろん無理だ。

 なぜ沢田はリスクを理解していながら迫ってきたのか。

 夜のだけでは足りなかったのか。

 それとも意地悪をしたかったのか。

 そして、なぜ自分は拒否できなかったのか。