奈緒は見栄っ張りで我が強い女だ。
更には母に苦労して育てられたため、結婚に対しての憧れがシビアである。
それが災いしてか、昔から「顔が良く金持ちで性格の良い男」と結婚すると決めていた。
人に自慢できる男。
苦労しないで済む男。
そんな条件にピッタリ合う樹。
花枝の憑いている沢田は、奈緒のお眼鏡にはかなわなかった。
いくら俺が花枝に近づいても、奈緒は沢田に惚れなかった。
最初こそ恋というよりは条件に合うから樹に近付いたものの、二年も付き合っていれば愛情は本物だ。
俺も長く奈緒と過ごしたことによって、奈緒に親心のような情がある。
奈緒が思う人と、幸せな結婚をしてほしいと願う。
しかし裏腹に、花枝とは離れたくない。
奈緒は奈緒で幸せを掴んだとしても、俺だって幸せに浸りたいのだ。



