沢田のやつ、とうとうやる気を出したか。
それともヤケになったか。
エスカレートしていく彼を、奈緒はなぜか拒むことができない。
チェックアウトの時間にはまだ余裕があるが、樹との約束はいつも通り昼前だ。
それまでに家に帰り、シャワーを浴びて、更に身支度を済ませねばならない。
それでも俺が花枝を求める限り、奈緒は沢田を受け入れる。
これまでは沢田の理性と善意で、樹との時間は守られてきた。
それが危ぶまれている今、奈緒は拒否できない自分にかなり困惑しているようだ。
樹を思って涙を流すほどに。
そう、俺がいくら花枝を求めても、奈緒は樹を愛しているのだ。
何度奈緒が沢田に惚れないかと願ったことだろう。
奈緒と沢田が一緒になれば、俺はいつまでも花枝と一緒にいられるのに。



