奈緒はカップを置き、立ち上がった。
「結婚考えてないわけじゃないって、言ってくれたし」
そしてローブを脱ぎ、着替え始める。
「今までちょこちょこやってきたことは無駄じゃなかったのよ」
意地を張ろうとしているのか、ふふんと余裕の笑みを浮かべて見せた。
沢田も立ち上がり、下着を身に着けようとする奈緒を後ろから包み込んだ。
「そっか。良かったじゃん」
どのような気持ちでそう言ったのか、オーラが複雑すぎて、俺にもよく読み取れない。
奈緒の細い肩に触れられた唇は、キュッと固く閉まったままだ。
「うふふ。だから、後はプロポーズだけなの」
嬉しそうにそう言った奈緒を、沢田はベッドに押し倒した。
「もう、早く出ないとお昼になっちゃうでしょ」
「いいじゃん、この際」
「ちょっ……」
昨夜より激しいキスの嵐に、奈緒は困惑した。
口にも、頬にも、額にも。
耳にも、首にも、胸元にも。
このままじゃ跡が残るのではないかというほど。



