「あたしってナルシスト?」

 奈緒は驚いたような顔をして沢田の顔をうかがう。

 この女、自覚がないのか。

 鏡を見る度に自分はイイ女だと思っているくせに。

「ナルシストだよ。で、どんな自信がなくなったの」

 沢田は悠々とタバコを吸いながら奈緒を促す。

「樹にプロポーズされる自信よ」

 奈緒はフーフーとコーヒーを冷ましながら無愛想に答えた。

 沢田は呆れたように煙を強めに吐き、笑った。

「プロポーズってそんなに大事?」

「当たり前じゃない。一生の思い出になるのよ」

「それはそうかもしれないけど、プロポーズされて式挙げて、その後の方が大事なんじゃない?」

 奈緒は眉間にシワを寄せ、沢田を鼻で笑った。

「わかってないなぁ」

 俺は沢田の言葉はもっともだと思うぞ。

 何をわかっていないというのか。

 沢田も首を傾げた。