沢田は伸ばしていた腕を奈緒の腹に回し、顎を肩に載せた。

「先越されちゃったね」

 意地悪な声で沢田が言うと、奈緒は右手で思いっきり肩に向けて湯を押し出す。

 パシャンと、さっきよりも派手な音がした。

「うわっぷっ」

「余計なこと言うな」

 つーんと冷たい視線を向けて体を離した奈緒は、無駄に広いホテルの浴槽の反対側に移動した。

 向かい合った二人は足で互いをつつき合い、次第に笑い合い、盛り上がってからベッドへ。

 じゃれ合い触れ合い求め合い。

 存分に体力を消耗しきったところで眠りについた。

 そして翌朝。

「あーあ、あたし自信なくなってきたんだよね」

「自信? ナルシストな毎熊さんが、珍しいね」

 沢田は奈緒が淹れたコーヒーを一口すすり、タバコに火をつけた。

 香ばしい匂いが近くにある空気清浄器に吸われていく。