芳子が待つバスターミナルへ和也は急いだ。

 交番を避け、警邏の制服警官を見ると、さり気無く道を変えて漸く新宿西口へ着いた。

 自然と小走りになった。

 京王デパートの前を通り過ぎ、目指す場所へと向かっている最中、ふと周囲に違和感を覚えた。

 和也の五感が危険信号を点滅しだした。

 辺りを見渡す。

 道路脇に車が何台か停車されている。

 不夜城の如き新宿ならば、路上に車が何台止まっていようとも別段どうという事も無いが、しかし、中には人が二人から三人乗車していたし、道の辻々に周囲の色合いにそぐわない人間達が意味も無く行ったり来たりしている。

 和也の危険信号のシグナルは、逃げろと激しく点滅している。

 だが、この場を自分一人だけで逃れる訳にはいかない。

 芳子が待っている。

 もう、一人で逃げ回るのは嫌だ……

 和也の足が止まった。