殺風景な六畳一間のアパートが、日毎に生活感のある部屋に変わって行った。
和也はその変わり行く様を見て、これが生きているという事なんだと実感した。
和也の所へ来て一ヶ月程経ってから、智恵美も働くと言い出した。
和也だけの収入でも、細々となら何とかやっていけるが、経済的な事よりも、毎日部屋に閉じこもってばかりいる事に、智恵美が耐え切れなくなってきたからだ。
一人で和也の帰りを待っていると、どうしても娘達の事を思い出し、涙に暮れてしまう。気を紛らわしたかった。
丁度、アパート近くのコンビニにパートの募集があり、昼間の間、そこで働く事にした。
ひっそりと人目を忍ぶようにして、ささやかながらも幸せと思える時間を過ごしていた二人だったが、突然、その幕は降ろされてしまった。
数日来の氷雨が秋の終わりを告げようとしていた十一月の終わり。
その日、智恵美はパート先のコンビニを早退した。
前日あたりから体調がすぐれず、また何時もの生理不順かな、位にしか考えていなかった智恵美は、普段よりも下腹部の痛みが激しくなってきた事で、さすがに不安を憶えた。
昼過ぎにアパートに戻ると、そのまま布団も敷かず身体を横たえた。
暫くすれば痛みも和らぐだろうと思っていたが、一向に痛みは治まらない。寧ろ酷くなって行く。
腰から下に重石を乗せられているようで、無理して身体を動かそうとすると激痛が走る。じっと痛みを耐えてるうちに、下腹部が熱を帯びたように熱く感じ始めた。
突然、下着が濡れる感触がし、同時に内腿を大量に何かが伝わるものを感じた。
はっとした智恵美は、激痛も忘れ、慌ててトイレに駆け込んだ。
恐る恐るスカートをたくし上げて覗き込んでみると、どす黒い血が下着の間から溢れ出ていた。急いでトイレットペーパーで流れ出る血を抑えようとした。
ロールを巻き取ろうとした瞬間、智恵美は気を失った。



