満ち足りた和也の気持ちとは逆に、智恵美の心は虚ろだった。その気持ちが重なり合った肌を通し、和也に伝わった。
「どうしたの?」
「河村と別れてきたんだけど、娘達、取られちゃった……」
驚いたように和也が身を起こし、智恵美の顔を覗き込む。
「そうか……」
「私、母親になれなかった……」
「智恵美」
「ごめん、せっかく逢えたのにこんな話しちゃって」
「何も謝る事ないよ。僕にも責任はあるんだから。でも、こうして来てくれたんだ。その事をもっと喜びたい」
「うん」
「なあ、二人の子供……作らないか」
「私達の?」
「二人の子供をさ、そして新しく家族になればいい。俺も一生懸命頑張るからさ。智恵美に相応しい旦那になってみせる」
「ありがとう……」
「生まれ変わるんだ、二人して……」
無言で頷く智恵美の身体を和也は力を込めて抱き締めた。
込められた力に和也の気持ちが溢れていた。
和也の胸を智恵美の涙が濡らした。



