慣れない現場仕事の疲れに身体を重くしながら、和也は駅からの帰り道をゆっくりと歩いていた。途中のコンビニで缶ビールとカップ麺を買った。

 アパートに着くと、自分の部屋の前に人が立っているのが見えた。

 暗くて仄かにしか見えない筈なのに、和也は一目見た瞬間、その人影が誰であるかが判った。

 重かった足の事など忘れ、その人影に走り寄っていた。

 人影が和也を認め、泣いているのか笑っているのか判らない顔をした。

「智恵美……」

「来ちゃった……」

 和也は智恵美が手にしていたバックを取り、部屋の鍵を開けた。

「待ってた……」

「うん」

 部屋の中は殺風景だった。

 家具らしいものは何も無く、衣類はその辺に脱ぎ散らかされていた。

「散らかってて……」

「ほんと、男の人ってみんなこうなんだから」

 慌てて部屋の中を片付け始めた和也を見ながら、

「今度、何処かに行っちゃうのなら、私を置いてかないでね」

 と智恵美が言った。その言葉が言い終わらないうちに、和也が智恵美を抱き締めた。

 二人は無言のまま互いに貪り合うようにして唇を吸い、着ている物を脱いでいった。

 冷えた畳の上に二人の裸体が転がる。

 熱を帯びていた二人の身体はそんな冷たさも感じず、ただひたすら肉体の感触を確かめていた。

 半年振りに触れ合ったお互いの身体は敏感に反応し、刹那的な快感に身を任せた。