阿寒湖から摩周湖をドライブした後、帰りたいと言う敬子を無理やり湖畔の旅館に連れ込み、彼女の処女を奪った。それだけではなく、そのまま敬子を釧路には帰さずに、良蔵は道東を連れ回した。
仕事は宝石ブローカーをしていると言っていたが、一緒に居る間、それらしい仕事は何もしていなかった。旅の途中、何度も良蔵から逃げようとしたが、気配を察すると、途端に暴力を振るわれた。暴力が終わると一転して優しくなり、敬子の肉体を求めて来る。敬子は心も身体も良蔵の掌の中でいいように弄ばれた。
旅をし始めて二ヶ月目、金が無くなったから稼いで来いと良蔵は言い、敬子を温泉旅館の仲居に売り飛ばした。
仲居と言っても実際は枕芸者のようなもので、何度も客を取らされた。この時、敬子には想像もつかない額の借金が背負わされていたのだ。
どんなに働いても敬子には一銭も入って来なかった。彼女が妊娠したのは、それから間も無くの事だった。
無理やり女にされた仲だとはいえ、毎晩のように良蔵と枕を共にすると、本人の意思とは関係無く、身体が馴染んで来るものだ。夜毎繰り広げられる痴態に翻弄され、知らず知らずのうちに自ら良蔵を迎え入れよるようになって行った。
妊娠した事で、敬子の意識が変わり始めた。
どうしようもない男とやっと気付いたが、お腹の子の父親には違いない。子供が出来れば良蔵も少しは真っ当になってくれるのではと思うようになった。
臨月が近付くにつれ、良蔵は敬子の所に戻らなくなった。出掛けたら暫くは帰って来ない。一日でも女無しではいられない良蔵だから、きっと他所で別な女でも拵えているのだろう。事実そうだった。
大きな腹を抱えながら、敬子は少しでも金を稼ごうと、旅館の雑用から下仕事まで何でもこなした。
給料日にはどんな事があっても帰って来ていた良蔵が、珍しく帰って来ない。初めて自分で働いた収入を手にした。
旅館の主人に暇を貰い、一年振りに釧路の母の所へ帰る事が出来た。



