伊勢佐木警察署に留置されていた元暴力団員が、
「仲間と四人で人を埋めた」
と供述した。
原因は、相手がシャブでテンパってしまったからだという。
「ムショで知り合った奴だったんだが、俺んとこに転がり込んで来てね。飯位は食わせてやってたんだが、そのうちシャブばっかやって、うちに居続けるようになったんだ」
転がり込んで一ヶ月近く経つと、家にあった金を無断で持ち出したりするようになったらしい。
その金で、またシャブを手に入れ、おかしな事ばかり言うようになり、時には暴れたりもした。
「それで殺っちまったのか」
「最初から殺るつもりはなかったんですよ。それに、直接殺っちまったのは俺じゃないんで」
暴れ方が尋常ではなく、どうにも押さえられなくて、その場に居合わせた別の男が金属バットで殴った。
元暴力団員は、昔の仲間に相談し、ブルーシートに包んで始末したという。
「それ、何時頃の話だ」
刑事の問いに、
「十年、経つかな……」
と答えた。
「十年前というと、平成9年か?」
「いや、俺が出所して来たのが平成9年の暮れだから、その翌年だね」
「殺った相手の名前は?」
「タカセリョウジ」
「どういう字を書く?」
説明を受けながらパソコンに文字を入力していた刑事は、その名前を何処かで聞いた事があるなと思った。
「埋めた場所を憶えているか?」
「奥秩父の山ん中」
「埼玉のか?」
「産廃の中に紛れ込ませた……」
刑事は裏付けを取る為に、部下の若い刑事に埼玉県警へ連絡するよう指示した。



