その山は、何年も前から不法に産廃業者が出入りしていた。一つの山全体が、異臭に満ち溢れている。
斜面の片側は、見るも無残に禿山になっていて、そこだけが死の山を思わせた。
尤も、この辺りを散策しようなどという奇特な人間は、まず居ない。
そこに足を踏み入れる者は産廃業者位のものだが、それも大概はもぐりでやっている業者ばかりだ。
内田洋平もその一人で、何度かこの山にダンプを乗り付けている。今日も未舗装の山道を何時間も掛けてやって来た。
大型ダンプ一台分の産廃物を積んで来ても、景気の良かった頃に比べて、そんなに金にはならない。危ない橋を渡っている割に、実入りは少ないが、かと言って今更他の仕事にも就けない。
辺りに人影がない事を確かめ、内田はダンプをバックさせた。既にこの場所も産廃でいっぱいいっぱいになっている。出来るだけ奥に捨てようとギリギリまでバックさせた。
ダンプの荷台を上げ、産廃を捨てた。
全部捨て切れたかどうかを確認する為に、一旦降りてみた。
後輪に、ブルーシートで包まれた物が引っ掛かっていた。
どろどろの染みが、そのシートから溢れて毀れ出していた。
凄まじい程の臭いがする。少々の悪臭は仕事柄から慣れていたが、その臭いはさすがの内田も吐き気を憶える程で、ゴム手をして後輪に近付いた。
シートの切れ端が後輪に絡んでしまったようで、それを外すのは難儀だなと内田は顔をしかめた。
悪臭と闘いながら、何とか外れたかと思った瞬間、内田は思わず悲鳴を上げてしまった。
「し、し、死体だあ!」
自分一人しかその場に居ないのに、内田は誰かに助けを求めるかのような大声を出した。
彼の足元のシートから、半分肉が腐り落ちた死体が転げ落ちた。