迷宮の魂


 科捜研へ出向いた前嶋は、ある事を確認したかった。

 今回の犯行現場の不自然さは、前嶋も感じていた。

 勘……

 警察官に必要な資質でもある。経験から養われる場合もあるが、何年現場を見て来ても、その勘が働かない捜査官も居る。

 新人でありながら、三山は勘で事件の不自然さを感じた。

 刑事としての資質は持っている。だが、それを裏付けて行く思考をこれから養って行かねばならないだろう。

 いい刑事になるかも知れないな……

 科捜研には、既にファックスで関係資料を送っていて、質問の要旨も伝えてあったから、着くと担当者が直ぐに前嶋のもとへやって来た。

「早速ですが、依頼した件についての所見を伺いたいのです」

「頂いた資料を拝見させて貰いましたが、単刀直入に言いますと、その可能性も考えられます」

 その言葉を聞いた前嶋は、うんうんと二、三度頷いた。

「もし宜しければ、凶器とされている包丁を一度お持ち下されば調べてみます。先に付着していたものを拭き取った痕跡を調べるのであれば、マイクロ波などで見てみないと何とも言えませんので」

「判りました。早急にお持ちします」

「それと、被害者の出血量の件ですが、簡単に説明致しますと、刺された部位にもよります。心臓や大動脈を刺されれば、瞬時に大量の出血が起こります。検死所見を拝見しましたが、胸部大動脈が切断されたとありました。ですから、短時間で大量の出血があっても不自然ではありません」

 そこで一枚の写真を前嶋は出した。

「これは、現場で撮ったガイシャの写真です。駆け付けた鑑識係が撮ったものです」

 写真には撮影された日にちと時間が写っていた。

 暫くそれを見ていた科捜研の担当官は、少し小首を傾げた。