「先ず、髪型から伺っても宜しいですか」
三山が金田江里子に質問し、マウスを動かして画面の写真にカーソルを移動させて行く。
「長さは、顎位まであったと思います……」
まるでラフスケッチをするかのようにカーソルを移動させ、髪型の輪郭を作って行った。たちまち、坊主頭にかつらが被されたようになり、それに色を着けて行った。
「こんな事まで出来んのか」
横で半分馬鹿にしたように眺めていた加藤が、思わず声を出した。
「色目は?」
「こんなに真っ黒というわけでは……」
「染めてたの?」
「いえ、若白髪とでもいうのですか、全体に灰色掛かった感じが……」
何度も色を修正していくうちに、最初の黒々としたかつらのような髪型が、リアルな質感になっていた。
「こんな感じですか?」
「……はい」
「顔の輪郭はどうでしょう?」
「普段から余り手入れのしない髪型のせいで、それに隠れて……ただ、もう少し頬が細かったように思います」
「顔色は?」
「島に居れば、大概は陽に焼けて色が黒くなるんですけど、直さんは、あっ、山本は余り外に出なかったせいか、病人みたいに青白かったです……」
パソコンのキーボードをカチャカチャと音をさせながら、画面の顔の色を薄くさせて行った。
その変わり行く画面をじっと見つめていた金田江里子は、少しずつ顔色を変えて行った。
金田江里子の様子が段々と変わって行くのを、前嶋と加藤は見逃さなかった。こんな感じですかと三山が尋ねても、彼女は押し黙ったまま、肯定も否定もしなかった。
無言である事は、時に雄弁となる。
「山本直也ですね?」
金田江里子の沈黙に耐え切れなくなり、咳き込むようにして聞いた。
頭を落とし、画面から目を逸らした彼女の肩が小刻みに揺れ出したのを見て、前嶋は確信した。



