案内されたデスクにあったパソコンを操作し始めた三山は、前嶋に微笑みながら頷いた。
「いけそうか?」
「はい。キャップ、明日にでも岩田勝巳か金田江里子をこちらに寄越して貰えませんか」
「モンタージュ作りか?」
「はい」
「ならば明日なんて言わず、今から呼ぼう」
三山は前嶋のこういう決断の速さを尊敬していた。物事を熟慮し、納得行くまではなかなか腰を上げないが、一旦決断すると誰よりも迅速に行動する。それによって生ずる責任は、全て自分が取るというスタンスで。
自分も何時かはこういう刑事になりたいと、日々前嶋と接する毎に思う。
三山は佐多和也の手配写真をプリンターにセットし、画像をパソコンに取り込んだ。処理速度の遅い古いパソコンだから、時間が多少掛かったが問題は無かった。
「加藤君、これからの警察も、こういうもんを使いこなせなきゃいかんなあ」
「キャップ、捜査は機械でやるもんじゃないでしょ。日頃キャップが言われてるように、足でやるもんじゃないですか」
自分より若いくせに相変わらず頑固な奴だなという表情を滲ませながら、前嶋はただ苦笑いを浮かべていた。
30分程して、金田江里子が署にやって来た。つい今しがた迄、自分の家で事情を訊かれていたのに、まだ何かあるのかと、不安そうな顔をしながら署の受付に立っている。顔馴染みの署員が、
「悪いねえ、もうすぐ店を開ける時間だというのに」
と気を遣って話し掛けていた。
刑事部屋の隅でパソコンを操作している三山の前に、金田江里子の為に椅子を置いた。そこに案内された金田江里子は、まるで自分がこれから厳しい取調べを受ける犯人であるかのように、全身を緊張で強張らせていた。
「先程も簡単に伺ったのですが、今度はもう少し詳しく山本直也についてお話して頂こうかと思いまして」
前嶋が金田江里子の緊張を解すように、如才無く言った。
「じゃあ、三山君いいかね」
「私の方は準備出来ました」
パソコンの画面に佐多和也の手配写真が大きく映し出されていた。



