アリスとウサギ




 何の嫌がらせだろうか。

「いらっしゃいませ……」

「おっす」

 深夜のバイトに入ると、頻繁にウサギが来店するようになった。

「啓介、知り合い?」

 代わる代わる美人ばかりを連れて。

 忘れたいと言ったアリスのために、こうして「女には困ってません」アピールをしているのだろうか。

 もしそうだとしても、アリスにとってはありがた迷惑なだけなのだが。

「お好きな席へどうぞ」

 ウサギは相手の女の髪に触れたり、手を握ったり、ドリンクバーで頬にキスをしたり……とにかくベタベタする。

 女はそれを喜ぶ。

 ウサギが自分に見せ付けているのかと思うほど。

 アリスはできるだけ見ないように努め、もし見てしまったときはズキズキと痛む胸を押さえては仕事に打ち込んだ。