アリスとウサギ


 アリスはウサギを遠ざけたことを少し後悔し始めた。

 ウサギはアリスを求めていたのに、彼の手を払ったのはアリス自身だった。

 一生女遊びをしたいと宣言した彼に愛される自信がなくて、でも飛び込むなら自分だけが愛されなければ嫌で。

 愛されないくらいなら、傷つく前に忘れてしまいたいと思った。



 なのに、心にはまだまだウサギが居座る。

 計画的に埋め込まれたウサギへの恋心は、アリスの心臓あたりに芽生え、生き血を吸ってしっかり根を張っている。

 嫌いになろうと思ってからかわれたことを思い出しても、ドキドキするだけ。

 寝ている間に襲われたことを思い出しても、ドキドキするだけ。



 これが得策だと思ったから、彼と離れることにした。

 自分の考えは間違えていない。

 だから涙は、酒のせいにしよう――。