アリスとウサギ


 ウサギに視線を送って何度目だろうか。

 バチッと視線が合った。

 化粧を施した自分よりよっぽどキレイなウサギの目に、閉じ込められたような気分になった。

 逃れるように視線をグラスに送ると、ウサギはハスキーな声で

「アリス」

 と呼ぶ。

 こうなると、彼を見ないわけにはいかない。

「何よ」

 惚れた弱みを握られたくなくて、アリスは不機嫌に返事をする。

「まだ怒ってんの? あの日のこと」

 口角を片方に上げ、意地悪に微笑んでいた。

「別に、怒ってないけど」

「ふーん。怒ってないんだ。じゃあまた来るか?」

「行かないし。覚えてないからなかったことにしているだけよ」

 なるほど、と言ってまたグラスを空けたウサギ。

 この男、どれだけ飲ませれば潰れるのだろうか。