アリスとウサギ




 人を好きになることと恋に落ちることは少し違うんだと思った。

 ウサギは好きになれるような男ではない。

 しかし、例えば名前が珍しかったり。

 自分の名前と縁があったり。

 それだけで彼の存在は特別だった。

 さらに良い声だったり。

 英語の発音がネイティブほどに流暢だったり。

 どんな男かも知らないのに、気持ちは勝手に高ぶる。

 そして、知り合ったとき。

 最低だって思っても、嫌いになれなかった。

 襲われたって、嫌いになれなかった。

 この時にはすでに、落とされていたんだ。

 深い深い、ウサギの穴に。

 思わせぶりな言葉に揺さぶられ、裏腹な行動に傷ついている。

 これからも、きっとそう。

 だから早く、忘れたい。