アリスとウサギ


 アリスはこの感覚に覚えがあった。

 恋という名前だ。

 しかし、未だかつてこんなにも悔しい恋は初めてだった。

 女ったらしの最低男。

 そんな男に、片思い。

 彼の周りには、きっとイイ女がたくさんいる。

 何かとちょっかいを出しては来るが、つまみ食いの対象。

 相手にしてもらっても、きっとすぐに捨てられる。

 大事になんてしてもらえない。

 彼を魅了できるほどの力がないことは、自分でよく理解できているのだ。



 そんな、悲しい恋。



「忘れよう……」

 アリスはもう一度ウサギと女の後姿をチラ見して、彼らが使用したテーブルの後片付けを始めた。