アリスとウサギ


「大丈夫。上がるの6時だから、もう朝なの」

 動揺を隠そうと笑顔を見せる。

 ウサギはそうか、と言ってメロンソーダをグラスに注ぎ、席へと戻っていった。

 アリスの鼓動はドクドクと速い。

 調理場へ小走りで逃げ込み、流し台に寄りかかって呼吸を整える。

 胸の奥から溢れる何かが、鼻の奥を刺激していた。




 午前4時過ぎ、ウサギと愛羅と呼ばれた女は会計を済ませて去っていった。

「ありがとうございました」

「ごちそうさん」

 女はまたウサギの腕にしがみつく。

 この二人、きっとこれから……。

 イライラする。

 ウサギはやりたいと思う人としかやらないと言っていた。

 どうやら自分はその中に入っているらしいが、ランクがあるとしたらあの女よりずっとずっと下なんだと思った。